世界は同じ神の為に今も争っている
キリスト教もユダヤ教もイスラム教も神は同じ
「エルサレムをイスラエルの首都と承認する」とアメリカのトランプ大統領が発言した。そんな話題が世界をざわつかせている。そもそもにエルサレムってどんな場所なんだろう？「エルサレム」という土地の名前を聞いたことのある人はとても多いと思う。君はどんな場面で聞いただろう？
僕が一番最初にエルサレムという名前を知ったのは、聖書の中だった。僕の通う小学校はキリスト教で、聖書の勉強をする時間があった。その時の頻出単語、「エルサレム」。キリスト教に少しでも触れたことがある人なら、このエルサレムという土地の特別さはよくわかるはずだ。だってここはあのキリストがその生涯の最後に十字架に架けられた場所なのだから。
でも実はこのエルサレムという場所はキリスト教にとって大事な場所という位置付けでは説明が不十分だ。ここは世界に名高い３つの宗教「キリスト教」「ユダヤ教」そして「イスラム教」の聖地が半径1km以内にあるという世界でも特殊な場所なのである。
僕の印象からするとこの３つの宗教、とても仲が悪いように思える。少なくとも僕が生まれてからこの方、仲がよかったことなんて一度もなかったじゃないか。でも大事な聖地が一緒ってどういうことだ？
これは別にたまたまではない。この３つの宗教、実は驚くべき共通点があるのだ。まさかの「神」が一緒なのだ。そう、ヤハウェとかアッラーとかGODとか、呼び方は違えどみんな同じものを信仰しているんだ。僕は初めてこれを知った時、思わず鼻息荒くなってしまった。世界は同じ神の為に争っているのか？って。どうしてこんなことになってしまったんだろう。それにはこの３つの宗教の成り立ちを見てみる必要がある。
３つの宗教ができるまで
「３つの世界の神が同じ」この衝撃的事実を解明する為に、それぞれの宗教の成り立ちを説明する必要がありそうだ。まぁ、とにもかくにも上の図を見て欲しい。これがこの３つの宗教の成り立ちをとてもざっくりと説明した図だ。
見てわかるように、一番古いものが紀元前2000年ごろにできたユダヤ教。このユダヤ教をもとに、キリスト教が生まれ、そしてキリスト教をもとにイスラム教が生まれたんだ。だからこの３つの宗教は兄弟のような関係と言えるわけだ。元々の宗教が一緒だから信じる神も同じだと考えられている。
では何が違うのか？違いをあげたらキリがないほどあるのだが、一つ覚えておいて欲しいことは、「イエス・キリストの捉え方」が違うということだ。
・キリストただの人間か、預言者か、それとも救世主か
イエス・キリストを知らない人はいないだろう。君はどんな風に彼を知っている？キリスト教の創始者？それとも預言者？神様の息子？それとも実在したかさえ怪しい髭もじゃのお兄さん？ 僕にとって一番身近なものと言えば、「聖★お兄さん」と言う漫画に出てくるキリスト（上画）で、あとは、学校で習った神の子としてのイエスかもしれない。
彼っていったい、どんな人だったのだろう？
サクッとわかるイエスキリスト
彼はベツレヘムのマリアとヨセフの間に生まれた。マリアは天使ガブリエルのお告げで自分が神の子を身ごもったことを知り、イエスを産む。
イエスは自分を神の子だといい、それまでの戒律中心のユダヤ教の教えではなく、愛や謙遜、罪への許しなど目に見えないものを説いた。
彼の布教活動はユダヤ教パリサイ派の人々の反感をかって、キリストは十字架にかけられて処刑されてしまう。でもその３日後に復活し弟子たちの前に姿を現した。
こんな彼が歴史上に登場したことで、それまでユダヤ教が信じられていた世界で、大きな変化が起こることになる。そしてこれは、現存する３つの宗教を形作る大きなきっかけになってしまったのだ。
さて、その３つの宗教の元になっているユダヤ教には「この世の終わりにメシア（救世主）が現れてユダヤの民を救ってくれる」という教えがあって、この「メシア」って誰なの？キリストなの？と言うのがざっくり言うとこの３つの宗教の違いだ。
それぞれの主張を見てみよう。
キリスト教にとってのイエスは「メシア（救世主）」だ。彼は自分を神の子だと言い、人々は彼を通して神と繋がることができるとした。
彼もユダヤ教徒だったけれど、その当時の戒律重視のユダヤ教の教えとは違う教えを説いた。彼が説いたのは、愛や謙遜、許しである。そんな彼に当然反感を持ったユダヤ教パリサイ派の人々は彼を異端として十字架にかけて処刑してしまった。彼が、その３日後に復活して弟子たちの前に現れたと言う話はとても有名だ。
ユダヤ教ではこの世の終わりに救世主がやってきて、人々を安楽の地へと導いてくれると言う教えがある。キリスト教の人にとってみればこの救世主がキリストなわけだが、それを認めなかったのがユダヤ教徒である。
キリストが生まれる以前のことが書かれている旧約聖書を大事にしていて、彼らの主張によれば救世主まだ現れていない。だからキリストは違う教えを唱えた異端と考えられている。彼らはまだメシアの誕生を待ち望んでいる。
キリスト教から少し経って成立したイスラム教でも、キリストはメシアではないと考えられている。キリストはあくまでも神ではなく、神の声を聞いた人間の一人として尊敬されている存在である。
イスラム教では、神の声を正しく聞くことができたのは、預言者ムハンマドのみで、彼はキリストの誕生を告げたあの大天使ガブリエルから神の言葉を聞いていたとされている。
旧約聖書・新約聖書を認めるものの、一番大事にされているのはムハンマドの伝えたものがまとめられている聖典クルアーンである。
同じものを信じているから争っている
さて、君にもわかっただろうか。３つの大きな宗教は同じ場所から生まれ、同じ場所で育まれたんだ。だからエルサレムは、３つの宗教の聖地があるという世界的にもとても珍しい場所になってしまったわけだ。
世界は違う神様を信じるがゆえに、途方もない争いをしているのだと、僕はずっと思っていたんだ。でも、そうではないのかもしれない。同じものを信じるから争っているんだ。同じものを信じているからこそ、譲れない。なんとなくこの感覚は僕にもわかる気がする。
僕たち日本人は、世界的にみれば、ユダヤ教や、キリスト教や、イスラム教といった宗教からは縁遠い存在に思える。だけど世界には、僕たちみたいな人よりも、ヤハウェとかアッラーやGODを信じる人の方がずっとずっと多い。
だけど、だからこそ、そんな僕たちだからこそ、こうやって知って、作り出せる新しい価値観や共存への道のりを、考えて行けるんじゃないかって、少しだけど思ったんだ。
今日も読んでくれてありがとう。
僕たちはまだ世界を何も知らない。
